大晦日の過ごし方 ー花火の町の巻−

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令和元年も残すところ1週間ほど。1年を振り返ったり、来年こそはと奮起して見たり。はたまた年賀状に勤しんだり、忘・新年会を逃げ回ったりの年末年始がもうやってきています。

ところで、年越しの瞬間って、みなさん何をしてます?

紅白を見終わった流れで、NHKの「ゆく年くる年」を見る人、近くのお寺に除夜の鐘を突きに行く人。(最近はネットニュースを中心に「除夜の鐘に苦情!」なんて話題もありましたが…)

新潟の片貝町ではですね、23時頃から町の鎮守・浅原神社にお参りに並ぶ、「二年参り」がポピュラーです。雪の中にも関わらず、多くの町民が列をつくります。

昨年(2018→2019)の年越しの様子です。二年参りにもやっぱり花火が打ち上がるんです。通称「除夜の花火」と呼ばれています。旧年と新年の厄年の皆さんが108発分の花火を奉納しているんですね。

ちなみに今年はですね、初の試みとして、年越しの午前0時のスターマインが参加・共有型になっております!

年を越す1月1日0時ちょうど打ち上げの新春スターマイン「福花火」が、30人限定ですが一口1万1千円でシェアできるように。新年の決意や抱負をぜひ午前0時のスターマインに込めて、皆さんと一緒に良いスタートを切りましょう。ぜひ福男・福女に立候補お願いします^^

ところでこの「二年参り」。私も最近知ったのですが、超ローカルルールとのこと。

というのも、花火写真家の金武 武(かねたけ たけし)さんが某国営放送の番組に出演する際に、巡りめぐって私の元に確認の電話が来たんです。N●Kの制作スタッフさんから。

「”除夜の花火”の正式名称を教えてください」

「はいはい、除夜の花火ですね。通称だと町の人もそう呼びますけど正式名称だと(確認後)二年詣り奉納煙火108発打ち揚げ行事、みたいです」

……………….はい。その、二年参りってなんですか?」

「はい??」

あ、あんまり初詣とか行かない人かな。世の中いろんなジャンルがあるからな、と察した私、なるべく丁寧にお答えしました。

「大晦日に旧年、行く年のお礼参りをして、そのままの流れで新年、来る年の初詣も兼ねて神社で新年の挨拶をするやつです」

…………………………そうなんですね。関東にはないのであまり分からなくて」

なるほどーーーーーー!!!

ないんだ!関東にないんだ!てことは全国一般的には「二年参り」ってなんじゃそりゃってことかー!ごめんごめん、田舎すぎてごめんーー!

とまさかの特殊文化だったことに初めて気づいて、驚くばかりでありました。

ちょこっと調べてみると、どうやら新潟と長野あたりを中心とする地方文化らしい。

試しにTwitterで「二年参り」をサーチすると、出てくる出てくる!長野の神社の観光案内とか、雪に恵まれた山間生活を満喫してたり日本海の夕日にふと感動してたりする、そこはかとなく”例のエリア”在住の雰囲気を感じさせるアカウント群が。

千曲川・信濃川というひとつの川でつながった長野・新潟は、独特の流域文化を色濃く残しています。甲信越は全国有数の煙火店がひしめくエリア。地域新聞の数も新潟・長野が群を抜いて多いということが分かっています。神社の数が日本一多いという新潟は、コミュニティが細分化されている不思議な土地なんだなということが見えてきそうです。

二年詣り奉納煙火108発打ち揚げ行事って、一般の方からすると、3回転+ヒネリくらいの高難度なローカル文化なんじゃないか。トリプルアクセルとかバックサイドダブルコーク1080とか、シライ3のような、超絶技巧の世界になってくるように思います。見てる側からすると謎だらけの。

①まず、「二年参り」ってそもそも何?

②「奉納煙火」って花火のことですか?

③除夜に108発も花火打ち上げちゃって大丈夫なの?

④てか花火って夏のイメージなんだけど

⑤除夜の鐘108発的なイベントって普通、神社じゃなくてお寺でやるくない?

ひるがえっていうと、全国的にも珍しい特殊な年越し文化でなんであります。似たような花火は県内では他に田上町くらいなんじゃないかと。

スキー場やカウントダウンイベントで花火がある場合も散見しますが、こう当たり前の習慣・風習として当たり前の文化の体をなしているのは、興味深いことかもしれません。

ちなみに、地域おこし協力隊員の佐藤勇介くんが、町の人へのインタビュー調査で面白い経緯を発見してくれました。

なぜ神社なのにお寺の行事というイメージがある除夜の108発なのか。それは、戦争で物資が不足した時代、お寺は大事な鐘まで供出しなければならなかったことから始まっていました。実際に茶畑の浄照寺では、平和の時代が訪れても長い間、鳴らす鐘がなかったままだったそう。

(近年になって立派な鐘が復活し、除夜の鐘つきが行われています。今年は「あの鐘をつくのはあなた」という奇抜なイベントタイトルのカードが出回っていました^^ 京都からUターンされた副住職さんのセンス、さすがです。)

こうして戦後、鐘の音のしない静かな除夜の時代が続きましたが、1970年代になって「鐘がなくてもこの町には花火がある!」と108発の花火を奉納することで、除夜の鐘の音としたのだそうです。やはりこの時も、当時煙火協会会長で浅原神社社務長だった本田善治さん(のちに四尺玉を開発する)が企画に大きく関わっていたようです。

目で見えるものとしてだけでなく、花火を「音」として受け止める、片貝人らしい感覚。「音」でつながる連想によって、鐘から花火へと、この町の除夜の音色は託されたのでした。

むむ。その流れを思うとより一層、二年参りの奉納煙火に込められた願いが尊いもののように感じられます。

令和最初の年越しは、どんなものになるのでしょうか。

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新潟県小千谷おぢや片貝かたかい町は
世界最大の花火が打ち上がる
4000人ほどの小さな町です。

「花火のち晴れ」は、花火のふるさと“カタカイ”の日々を記録する日記のようなものです。いつもの静かな朝から、熱狂的なお祭りの夜まで。どこにでもありそうで、世界のどこにもないかもしれない、この町の姿を伝えていきます。

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