雪国の巨大すぎる焚き火 -サイノカミ- 前編

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いきなりですが、この記事には重大なタイトル詐欺が含まれています。すみません。

実は全く “雪国” らしくないのです。今年の新潟は。

1月12日でこの景色。晴れて新潟も関東の仲間入りかとネボケてしまうほどに、小春日和すぎやしませんか。

小千谷市最北端の八島(やしま)から八海山で有名な越後三山を眺めた景色なんですが、いかがでしょうこの大草原ビュー。里地の片貝は、例年との比較でいうともはや南国といっていいくらいの肌感覚です(さすがに多少盛ってますが、わりとTシャツいけます)。いやいや、本当に今年は雪がほとんど降らないんです。

先月末、足を伸ばした湯沢のスキー場もこの有様。なかなかに厳しい異常気象です。

ただ、この冬の状況はまったく他人事とも言えません。雪不足で困ったことになるのは、なにもスキー場や除雪作業関係者だけではないんです。気候変動の影響はいまや世界規模。日本のお正月を締めくくるこの時期、雪国の我が町に伝わる伝統行事にも、大きな影響がありました。

サイノカミです。「塞の神」とも書きます。英語でなんと言ったらいいのかは見当がつきません。

いわゆる道祖神信仰の風習で、どんど焼きや左義長と言って全国的に見られるものの新潟版です。お正月の終わりに地域の人で集まって、火を焚くやつですね。

(※画像は昨年の小千谷市塩殿・クラインガルテンでの「鳥追い行事」)

新潟版のサイノカミで特徴的なのは、何と言っても火の周囲一面の雪。そりゃ “雪国” ですから。吐く息まで真っ白な真冬に、親しい人たちとひとつの火を囲む、温かな時間…のはずが、今年は全くそんなふうにもいかないという。

川端康成的な情緒の問題はさておいても、火を焚く地面にある程度の雪が積もっていないと色々と危なかったりするため、地域によってはやむなく中止・規模を縮小など影響があったようです。

そういった状況を踏まえてこの光景をご覧ください。さて、お分かりになっただろうか…? 上の画像に見られる、奇妙な光景を…

暖冬とはいえ、なんと雪があるんですよ。浅原神社参道の入り口には。

さすがは霊験あらたかな浅原の杜、というわけではなくこれは、新成人の若者たちが山から軽トラで雪をわざわざ運んできてくれたという、ガンバリの賜物なのでした。

「108灯」といいながら、ゆうに300本あるロウソクを参道に並べていく作業。

数十年前から成人同級会が花火資金集めのために神社行事の作業を手伝うようになったことが始まりと聞きます。ここでもやっぱり、雪がないとサマにならないようです。

ちなみに新潟県は、成人式の日程が全国的なスケジュールと異なります。豪雪地帯では交通事情から冬を避けて、5月のGW中や8月のお盆時期の日程が一般的なんです。だからこそ、新成人の彼らもこういった “シゴト” ができるわけです。

参道を抜けて神社境内に入ると、こちらは大人の作業が急ピッチ。

“巨大すぎる焚き火” というフレーズは、決して誇大表現ではないと思います。パッと見た感じ、20メートルくらいの高さはありそうです。

よく見ると、ワラでできた円錐状のサイノカミ内部にしめ縄などの縁起物がたくさん入れ込まれています。

新年を迎えて間もない行事ともあって、旧年の縁起物を燃やして心機一転の機会でもあります。ちなみに、上部の竹笹の部分にくくりつけられている手習いや書き初めなどを燃やすのには、学業成就の意味が。なんでもこのサイノカミの火で燃やすことで、ひとつの清算になっているんですね。

それにしても、「小正月の伝統行事」という地域文化への配慮がなければ、これほど大きな焚き火をすることは難しいかも。

はっきり言って大きすぎるし、燃え上がるとさらに高く炎が渦巻き、ほとんど火柱の化け物です。これを普通の日にキャンプでやったら間違いなく通報されます。※この地域のサイノカミは、事前に消防署に届出をするのが決まりです。

着々と準備が進む最中、町の各地では「もっくらもち」と呼ばれる “鳥追い行事” が。

「♪モックラモーチはどこ行った〜」の歌を歌いながら、「おんまいど」というしめ縄などでできた大きな道具を抱えた子どもたちが、町内の玄関先を門付。この「おんまいど」で家の軒先を叩くような仕草を見せて、田畑や軒下を荒らすモグラなどの鳥獣を追い払うのだとか。邪気払いの意味がある伝統の行事です。

現在も行なっているのは、片貝の中でも稲場や屋敷、一之町の一部地区などに限られています。

徐々に神社には町民の皆さんが集まって来ます。

提灯に記された会名は、今年一年間のお祭り行事の “顔” の学年の皆さん。

さあ、準備が整ったところで昼の部の始まり。片貝商工振興会と片貝町煙火協会による福餅まき。ものすごい人出。

飛び交うお餅の中に入っている “福” は、たくさんの景品に交換できます。これも風物詩。賑わいはさながらお祭りといった感じがします。

昼の部が終わって一旦引き返すと、かっこよく衣装チェンジした新成人の皆さんに出会いました。彼らにはこの日、まだまだ大きな “シゴト” があるのです。夜にそなえて再度、準備を整えに来たところでした。

そして、夜にはお待ちかね!メインのあれに火が灯ります!

その模様は、後編につづく。

 

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