ある日突然、尺玉花火を打ち上げることになったら – “花火愛は何ギガあっても足りない” 並木さん(22歳)の場合 –

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笑顔爽やかな“ 2020年のラッキーボーイ ” 、並木さん(22歳、魚沼市会社員)がジャンケン大会で勝ち取ったのは、1発の尺玉花火(10号玉、5万3000円相当)でした。

花火好きの並木さんがビッグな幸運をつかみ取ったのは、今年1月。片貝花火「冬の章」ともささやかれる小正月の伝統行事 “ サイノカミ ”でのこと。会場の浅原神社参道前の倉庫「スタ場」で開催された大ジャンケン大会を勝ち抜き、見事、今年9月の片貝まつりで尺玉1発を打ち上げる権利を獲得したのでした。

昨年の「大ビンゴ大会」で優勝し、尺玉花火を打ち上げたジュンタくん(6歳になりました!)から花火玉レプリカを受け取った並木さん。「軽い気持ちでジャンケン大会に参加した」そうですが、あまりに予想外の展開に「……………まさか自分が………….」と放心状態で言葉にならないようでした(笑)

そろそろ落ち着きを取り戻した(?)であろう2月末、「ご無沙汰しています。どんな花火を打ち上げるか、イメージできてきましたか?」とメッセージ。

すると、すぐさま「(越後妻有など)冬の花火がことごとくダメになってヒマなので、片貝に行きますよ」と例年にない雪不足や新型コロナウイルス対策の影響を受けて意気消沈中……にもかかわらずジェントルマンな神対応。お言葉に甘えて片貝総合センターにてお話を伺いました。

「釣りと花火が趣味なんです」とバッグからあの大曲花火大会のグッズを取り出す並木さん、実は只者じゃありませんでした。

「息するように花火を見に行きますから」

昨年めぐった花火大会はなんと50ヶ所以上!実に毎週末のペースで、その言葉通り、仕事の息抜きになっているのだとか。しかも、20歳時点で秋田の大曲で「花火鑑賞士」の認定を受けるという猛者。「一度ハマったら、趣味にはとことん入れ込んじゃう性格で……ヘンタイみたいなもんです」と控えめに自白してくれました^^

しかもしかも、いっそう興味深いのは、専用のカメラを持たない動画派の花火フリークということ。世間ではカメラやレンズに結構なお金をかけてしまう花火ファンの苦労(いわゆる「レンズ沼」)が聞かれますが、並木さんタイプってけっこう珍しいんじゃないかと思います。

「カメラをセットすると、動画に自分の声を入れたくないので無言なんですけど、心の中ではめっちゃ『うおーーー!!』って叫んでますね(笑) 興奮して。いい花火を見届けられたときは、片手でガッツポーズしてます」

片貝の花火では、「時差式」や「八方咲き」といった新しい花火が上がるとガッツポーズが出るとか。

昨年、片貝・浅原神社の春祭りで初めて花火が打ち上がった際には「いつもの片貝花火と違う玉が上がって、放心状態で。その年の大曲でも打ち上がったタイプの花火もあって、その年の傾向が分かりましたね」さすがです。

“ いつもの ” 花火動画の撮影セットを見せてもらいました。すごくコンパクトで身軽。コストパフォーマンスも申し分ないそう。「むしろ観覧チケットとか、ご当地グルメやグッズの方がお金使っちゃいますね」と若者らしい、新鮮なスタンス。

スマホ撮影のため、保存用のmicroSDの枚数はものすごいとか。なるべく身軽に動けるように、軽自動車に折り畳み自転車と寝袋、そして釣竿を詰め込んで、県外まで花火旅に出かけるそう。

大好きな神明の花火(山梨県)も、このクリップ式のスマホ用レンズでいけるとのこと。長岡のフェニックスや柏崎の尺玉100発同時打ちは、レンズなしでも収まる撮影範囲だとか。いやいや、スマホあなどるべからず。

とはいえ、やっぱり花火は肉眼派^^

「カメラもあるけど、近くまで行って、自分の眼で見るのが好き。見届けたぞ、って感じが一番近いかも」

こちらは、栃木県の花火どころ足利での一品。レモン牛乳って確かにSNSとかで見たことがある!(笑)その土地のご当地グルメはしっかり食べちゃう、お茶目さんでした。

様々な花火大会を自分の目で見て回った人から聞く「花火の楽しみ方」は、大いに勉強になります。

並木さんが花火に目覚めたのは、上越での高校時代。すでに中学生の頃から、長岡のおばあちゃん家から眺める花火をガラケーに納めてはいた。ところが2015年、長野で11月に開催された「えびす講煙火大会」110回記念大会で衝撃を受ける。「尺玉じゃないのに、ここまでコーフンするのか」。

目に焼き付いて忘れられないのは、名手・紅屋青木煙火店の「剣の舞」だった。当日は寒すぎてバッテリーがすぐさま0になり、動画はアップできなかったが、その時からSNSで繋がっているフォロワーさんがいる、と笑顔。

県内業者のみならず信州や上州、山梨の煙火店も入り乱れる上越の特殊な“花火事情”も、並木さんにとっては刺激的だった。

さて、最後に話題は9月打ち上げる花火について。しばらく考え込むようにうつむいて、「いつかどこかで花火を上げられたらと思っていたんですよね」と“自分の花火に込めたい思い”を明かしてくれました。

「2016年に亡くなった長岡のおばあちゃんと、最近亡くなった釣り仲間への追悼で。あと、花火動画のフォロワーさんにも今までの感謝を伝えたい」

釣り仲間とは、2018年に急逝した日本バスフィッシング界のレジェンド・本山博之プロ(享年60)。フィッシングショーで話しかけてくれたことをきっかけに、「よくしてもらった」という。“ 友達 ”となったFacebook上で適宜アドバイスをくれるなど、40歳も年の離れた並木さんを見守ってくれた。突然の訃報に際して「この人が亡くなるんだ、とただただ驚いた」

「(ジャンケンに勝ってから)じっくり考えてきました。片貝で花火を上げるなら、自分のためだけじゃなくて。ある意味重いかもしれないけど、そういう思いで上げたい」

自分一人で打ち上げる花火はもちろん初めて。打ち上げまで6ヶ月も前だが、今から楽しみで仕方がない、と笑顔を見せた。

「花火愛は何ギガあっても足りないですね」

愛するものについて、とにかく嬉しそうに語る並木さんは、花火動画アップのために目下、通信制限と戦っている。

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「花火のち晴れ」は、花火のふるさと“カタカイ”の日々を記録する日記のようなものです。いつもの静かな朝から、熱狂的なお祭りの夜まで。どこにでもありそうで、世界のどこにもないかもしれない、この町の姿を伝えていきます。

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