2021.02.15
雪国の小正月の風物詩といえば、塞の神(サイノカミ)。トバと呼ばれるワラを大量に巻きつけて、雪原に立つ円錐状のとんがり。夜、このサイノカミを燃やして1年間の無病息災を祈る伝統行事です。
このサイノカミの中には、しめなわやお札、ダルマといった縁起物が詰まっているようです。
1年間のうちに書いた習字や、書き初めも一緒に燃やして、字の上達(学問の成就)を願うこともあります。子どもの毛筆を見て、急に押し寄せる懐かしさがすごいです。
本来は1月15日前後に開催されます。今年は、1月9日と10日に大寒波が直撃し、片貝も2メートルを越える大雪で、諸々の準備が滞り、1ヶ月ほど先の2月14日(日)に延期されたのでした。
すると、3月上旬並みという見事な陽気に。軽装でコーヒー片手に談笑する人も。
感染症対策のため行事スケジュールが縮小・短縮されて、夕暮れ前の明るい時間帯からのスタートです。
サイノカミや浅原神社参道の108灯(巨大ローソク)に灯す御神火を神社関係者から受け取る成人・晴葉会の副会長。松明に種火を灯すと、いったん町外れまで移動して、聖火ランナーのごとく町内を練り歩き、サイノカミ行事の始まりを伝えます。
宝物殿に立てかけられている巨大提灯には、令和3年の片貝まつりで主要な花火を打ち上げる厄年記念学年のみなさんの同級会名がずらり。どれもかっこいい名前が揃っているような気がしますね!
翠(みどり)の半纏姿がかっこいいのは、42歳厄年・翠心会(すいしんかい)の皆さんです。
スタートした成人の到着を待つ間、社務の方が参道のローソクを着火しやすいように加工。共同作業で火を迎え入れます。
さあ、南方の一之町方面から、にぎやかな声が聞こえてきました。
その声につられて、大通りにはちらほらと町民の姿が。
来ました来ました!成人・晴葉会(せいようかい)のみなさん。
実は1学年で25人ほどという、片貝史上最も人数の少ない学年でもあります。そのため、1学年上の兎龍会(うりゅうかい)、1学年下の逢寵会(あいちょうかい)の3学年で協力しての練り歩きです。
少子化、若年層の流出はもうここまで来ています。しかもライフスタイルや価値観も多様な昨今、昔のように1学年で行事をやり遂げるだけのマンパワーの確保は難しいものがあります。コロナ禍の影響でいまだに成人式を迎えられていない1学年上の兎龍会の例が象徴的ですが、「成人」というタイミングそのものが揺らいでもいます。
来年には法的にも18歳が成人の年齢に切り替わるわけですし。若者が1学年単独でお祭りを担うロールモデルは、すでに昔話になっているのかもしれません。
とはいえ、その変化がポジティブに映る場面も多くありました。
道を進むうちに、次第に遠慮は薄れていったのか、より元気と笑顔が。
学年の前後は大人になれば大きな差ではないし、新たに協力する連帯感も生まれ始めてきたといっていいと思います。
実際には大変なことも多いのだと思いますが、なんだか応援したくなりますよね!
道中、町民や先輩たちからもしっかりとエールが送られていました。
さあ、たっぷりゆっくり50分ほどかけて、神社へ到着。参道の坂を一気に上っていきます。
そして初めて公式に神社に奉納する木遣り。青春です。
悲しいことに、私たちはもう戻れませんね。羨ましすぎる若々しさです。
さて、成人とともに御神火(花火)も到着して、メイン行事が始まります。
まずは42歳厄年・翠心会の皆さんによる福餅まき。大塚会長が舞殿からマイクでご挨拶。「モチ!モチ!」と待ちきれない子どもたちを、見事な話芸で落ち着かせていました。
もちろん、感染症対策を踏まえた分散型の餅まきスタイル。高齢者ゾーンや、子どもゾーン。未就学児などのお菓子配布ゾーンに分けて、極端な密を回避。
「大きな声が出せないので、皆さん心の中で3つ数えてください!3、2、1、まきまーーーす!」
どんな時だって、餅まきはガチでマジだ。いつの世もそれがこの町のリアル。元気いっぱいでしたー!
そして、いつもよりは明るいものの、いい感じに暗くなって来て、ようやく御神火の出番。
仕掛け花火もがっつり!炎柱すごい!煉獄さん級の業火です。(後半になると文章が雑になってすみません…笑)
個人的に感動したのは、成人の吉原会長の町民への挨拶。元気を出しすぎたのと緊張とがあいまってか、若干たどたどしいようにも見えましたが、しっかりと想いを伝えました。「よろしくお願いします!」の後には、会場から拍手も聞こえた。
そして、スターマイン!大小のサイノカミそれぞれに打ち分ける構成でした。
明るさの残る夕方の花火も、空に独特の青みがあって好きという人、実は多いのでは。そんな風に思うことがあります。
火が落ち着いて来た頃に、竿に吊るしたスルメを炙っていく人々。令和3年にも、昔ながらの雪国の姿があります。
そしてそして、サイノカミの炎がようやく燃え尽きるかという19時、1発の尺玉花火が打ち上がりました。42歳・翠心会の皆さんの花火です。片貝花火サポーターズ倶楽部のプライベート花火企画「みんなの想いが花咲くまち片貝〜ふゆ物語〜」に申し込んだもので、今年の秋、復活する片貝まつりへの弾みとなったのではないでしょうか。
「花火のち晴れ」は、花火のふるさと“カタカイ”の日々を記録する日記のようなものです。いつもの静かな朝から、熱狂的なお祭りの夜まで。どこにでもありそうで、世界のどこにもないかもしれない、この町の姿を伝えていきます。