2018.08.31
50歳の厄年・翼進会(よくしんかい)さんが明日、「しゃぎりの練習するから!」という噂を聞きつけ、翌日、”に組小若”の笛メンバーと一緒に事務所へお邪魔。
片貝バイパス手前にある事務所に近づくと聞こえてきた、「おけさ」の音色。
2階に上がってみると、女性陣と会計担当者が作業の傍らで、笛と太鼓の男しょたちが一心不乱に「しゃぎ」っていた。
「に組は何本調子?」
”しゃぎり”のコンサートマスター的ポジション“だし”の笛を務める太刀川さんのファーストコンタクトはやっぱり、”しゃぎり”に用いる笛のことだった。
に組は昔から”三本調子”という、篠笛の中では比較的大きいものを使っている。
「低くて太い音が出る、難しい笛なんだよね」と、に組出身の翼進会会長の佐藤博文さん。
ピッタリとあった演奏はさすがの翼進会さん。
厚みのある笛は、息継ぎと転がしが申し合わせたようにシンクロする。
10年ほど前に還暦・慰十六会(いそろくかい)の祭り屋台の”しゃぎり”を務めたのを皮切りに、毎年のようにお囃子方をこなす職人集団だった。
梁むき出しのロフト調の事務所に重心の低い太鼓が響く。力強さはベテランならでは。
大音量の傍らにもかかわらず黙々と作業中の女しょだが「このくらいにぎやかな方がいいよね」と最高なBGM環境だった。
演奏に合わせて、前歌や道中木遣りなど、江戸時代以来とされる伝統的な節回しの歌も。
一度は廃れそうになった歌だが、近年は現役世代も積極的に取り入れているとのこと。ここに伝統継承の新たな息吹を見た。
作業机に置かれていたのは、特大サイズの丸「よ」。
いうまでもなく、翼進会のシンボル的ひらがなで、女性陣のTシャツなど至る所に「よ」が隠れていたょ。
丸”よ”印のお祭り専用PCも!
壁一面のお祝い”のし紙”。ベテランらしい、飲食店関係のラインナップ。
「イラスト担当のやつが結構上手でさ、今日はいないんだけど」
すごく素敵な、当日のお祭り屋台の経路図だった。
「この太鼓は確か大正時代のものとからしいよ。三組からもらったって聞いてるけど、どうだったかな」
なかなかに渋く、黒光りするような太鼓を思いっきり打ち鳴らす。披露してくれた曲目は「みちびき」や「さまよ」、「にへん返し」まで。当たり前のように高難度の技を繰り出す熟練者たちに小若は終始正座を崩せずにいた(笑
歴戦の篠笛。この、調子を示す数字があったりなかったりする”頭”の部分の特徴で、自分に一番合った相手を覚え、選び取っていくのが、片貝人の運命的な成長記録でもある。
“悪い笛”と呼ばれるものも、人によっては相性が良かったりするから不思議。
1時間程度の練習を終え、早々に宴会へ。「まあ、ちょこっと音を合わせるって感じかな」と佐藤会長。練習といっても曲目につき1回ずつのセッションのみ。
「毎日やるわけじゃないけど」とあっさり。それだけで仕上がっていくのだから、きっとプロ集団だ。
「お囃子連合」という名前での活動時期もある、翼進会さんを中心とした、”しゃぎり”好きの大人たち。一心会さんや翔心会さんといった連合メンバーも駆けつけてのお囃子熱は高い。
この日は42歳厄年の翼翔会さんからも、セッションに訪れていた。
なんと、お祭り1日目の9日には、還暦・船出会さんの”しゃぎり”を50歳・翼進会、42歳・翼翔会で担当するという…!めぐり合わせにもほどがあるのでは^^
ベテランたちの”しゃぎり”熱にかなりのバイプスを感じて、帰り道はにぎやかな小若たち。
お祭りまであと10日。笛を吹き鳴らすうちにあっという間の夏が終わる、そんな秋の音は、思ったより遠くないところから聞こえ始めていた。
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「花火のち晴れ」は、花火のふるさと“カタカイ”の日々を記録する日記のようなものです。いつもの静かな朝から、熱狂的なお祭りの夜まで。どこにでもありそうで、世界のどこにもないかもしれない、この町の姿を伝えていきます。